アルスラーン戦記(13) (週刊少年マガジンコミックス)
内容紹介
「奪還」か「救援」か。少年の決断が東方の荒野を赤く染める
王都進軍の途上、アルスラーンの耳に届いたのは、北方・トゥラーン軍によるペシャワール城急襲の報せでした。目の前の悲願を捨て、味方の危機に駆けつける道を選んだアルスラーン。そこに合流したのは、一筋縄ではいかない「流浪の万騎長」クバード。
「草原の覇者」を自称し、数に勝るトゥラーン騎兵に対し、ナルサスの智略とパルス最強の武勇が火を吹きます。 一方、脱獄したアンドラゴラス王の復活で王都は混沌を極め、ヒルメスは伝説の「宝剣ルクナバート」を求めて禁忌の地へと足を踏み入れます。 人間たちの王位争いを超え、古の邪悪「蛇王」の鼓動がパルス全土を震撼させます。
「優しい王子」から「決断する指導者」へ
王都奪還という個人の目的よりも、領民と仲間を救う「公」の責任を優先したアルスラーン。この苦渋の選択こそが、彼を単なる「神輿」ではなく、真の王へと成長させていく過程として非常に熱く描かれています。
東方戦線のスケール感
パルス軍vsトゥラーン軍。騎馬民族同士の激突は、これまでの城攻めとは一味違うスピード感と物量戦が楽しめます。特にクバードの「人を食ったような」戦いぶりと、ダリューンの「人の形をした災厄」級の無双っぷりは、戦記ファンならガッツポーズものの爽快感です。
王都側のドロドロした「三つ巴」
復活した猛虎・アンドラゴラス、野心を燃やす銀仮面ヒルメス、そして裏で糸を引く魔道士たち。人間同士の権力闘争に、超常的な「蛇王ザッハーク」の要素が絡み合い、物語のジャンルが「歴史劇」から「世界規模の神話的災厄」へとシフトしていく予感にゾクゾクします。
王都を目前にして引き返す……。一見すると物語が停滞したような「虚しさ」を感じる展開ですが、それを補って余りあるのが、アルスラーンと部下たちの強い絆です。 「殿下が行くならどこへでも」というダリューンたちの揺るぎない信頼があるからこそ、この寄り道もまた「王の道」の一部なのだと納得させられます。
それにしても、ヒルメスが追い求める「宝剣ルクナバート」と蛇王の存在。「王位の正当性」という人間的な価値観が、人知を超えた邪悪に飲み込まれていく不穏さがすごいです。政治劇としての面白さと、ファンタジーとしてのワクワク感が最高潮に達した、分岐点とも言える重要な一冊でした。