ファイアパンチ 6 (ジャンプコミックスDIGITAL)
内容紹介
炎は消えたが・・
ユダが生命エネルギーを吸い尽くす巨大な「木」へと変貌し、世界が凍りつこうとするなか、アグニは自らの炎を叩きつけ、その連鎖を粉砕します。
崩れ落ちた木のあと、浜辺に残されたのは、炎が消え、再生能力も衰えた「ただの男」アグニと、記憶を失い幼児退行したユダ。アグニは彼女を失った妹の名である「ルナ」と呼び、偽りの兄妹として静かな生活を送り始めます。
ドマの教え子たちが身を寄せる隠れ家で、平和な日々を守ろうとするアグニ。しかし、その「平穏」を脅かす者には、容赦なくかつての「ファイアパンチ」としての暴力が振るわれる。「俺が、ファイアパンチを殺す」――自らの中にある怪物を葬るため、アグニが選ぶ「再生」の道とは。
ファイアパンチ」という看板の掛け替え
全身を焼き尽くしていた炎が消え、右腕も再生しない。物理的な「無敵」を失ったことで、物語はド派手なアクションから、「罪を背負った人間がいかにして生き直すか」という、ヒリヒリするような心理ドラマへと変貌します。
アグニとルナ(ユダ)の、美しくも歪な「おままごと」
記憶のないユダを妹と思い込もうとするアグニの関係性は、一見すると救いに見えますが、その根底には「欺瞞」が横たわっています。この優しさと狂気が表裏一体となった日常描写は、藤本先生にしか描けない「静かな地獄」です。
「自分自身」への復讐依頼
ドマの娘から「ファイアパンチを殺してほしい」と頼まれ、「俺が殺す」と答えるアグニ。復讐者が、復讐される対象(自分)を殺すと誓う……。このメタ的で幾重にも重なった因縁が、物語を一気に深淵へと引きずり込みます。
第6巻は、まさに作品のリセットボタンが押されたような巻でした。 「燃えながら殴る」というビジュアルのインパクトで突っ走ってきた物語が、一度足を止めて「で、そのあとどうするの?」という状況のような。
アグニがルナ(ユダ)を守るために、また平然と人を殺して戻ってくるシーンは、彼が「炎」を失っても「怪物」のままであることを示していて、ゾッとしました。 「俺がファイアパンチを殺す」という台詞は、自分自身という物語に決着をつけるための、最も孤独で壮絶な宣戦布告に聞こえます。
救われたはずなのに、どこかずっと息苦しい。でも、その息苦しさの先に何があるのかを見届けずにはいられない。読者を「共犯者」にするような、とんでもない転換点の一冊でした