アルスラーン戦記(10) (週刊少年マガジンコミックス)
内容紹介
「奴隷廃止」の衝撃と、集結する英傑たち
パルスの地へ帰還した王太子アルスラーンが放った「ルシタニア追討令」と、前代未聞の「奴隷制度廃止令」。この報を聞きつけ、ペシャワール城にはザラーヴァントやイスファーンといった、一癖も二癖もある猛将たちが続々と集結します。
一方、銀仮面ヒルメスは、狂信者ボダンが籠るザーブル城の攻略を開始。信仰という名の狂気に憑りつかれたルシタニア兵をものともせず、自らの覇道を突き進みます。
華やかな軍勢の影では、古の邪悪な魔術が蠢き、仲間内では隠されていた「過去の因縁」が火花を散らす。王都奪還を目前に、アルスラーン陣営を揺るがす最大の亀裂が走る。
新キャラ祭りとナルサスの「現実主義」
ザラーヴァントやメルレインなど、名前を覚えるのが大変なほど新キャラが登場します。 盛り上がる一同を横目に、「兵が集まるのはいいけど、その分食料もも集まってくれるとよいのだが…」と、一人だけ兵站(ロジスティクス)を心配するナルサス。この「夢を見ない軍師」の視点こそが、戦記物としてのリアリティを支えています。
信仰か、血統か。ザーブル城の地獄絵図
「神の名を叫んで特攻する」ルシタニア兵の姿に、さすがのザンデたちもドン引き。「信仰に殉ずるのと、王家に殉ずるのは何が違うのか」というサームの問いかけは、物語全体に流れる「人が何に命を懸けるのか」という重いテーマを突いています。
メルレインの「分かりやすい」惚れっぷり
不器用でぶっきらぼうなメルレインが、イリーナ姫のために一肌脱ぐ姿。周囲の全員が「あ、こいつ惚れたな」と察する中、一人で格好をつけているのが微笑ましい(笑)。ゾット族は兄妹揃って、押しが強いというか、一途というか……情に厚いですね!
最悪のタイミングでの「ギーブの告白」
魔術使いの襲撃という騒動の最中、イスファーンに対し「お前の兄(シャプール)を射殺したのは俺だ」とサラッと言ってのけるギーブ。空気を読まないこの告白が、結束を強めるはずのアルスラーン陣営にどのような火種を撒くのか。緊迫感が一気に高まります。
第10巻は、アルスラーンの「理想」が形になり始める一方で、現場の「泥臭い問題」が噴出する回でした。 「奴隷廃止」という英断を下したものの、それによって集まった諸侯たちの利害関係や、古くからの因縁…。特にイスファーンとギーブの関係は、見ていてハラハラします。「介錯」という善意(?)があったとはいえ、遺族からすればそんな理屈は通用しないわけで。
また、不気味な魔術使いの再登場など、ファンタジー要素も強まってきました。「人間同士の戦争」の裏で「人外の脅威」が首をもたげる構成、ますます面白くなってきました。