藤本タツキ短編集 22-26 (ジャンプコミックスDIGITAL)
内容紹介
この才能、制御不能。のちの巨匠が描いた、愛と狂気の初期衝動
『チェンソーマン』の藤本タツキが22歳から26歳の間に発表した4編を収録。 海中でピアノを弾く少年と人魚の恋、ある日突然「女」になってしまった少年の葛藤、角の生えた恐ろしい妹を溺愛する兄、そして「絵」という才能を巡る姉妹の愛憎劇。
叙情性とシュールさの共存というべきでしょうか。 胸を締め付けるような美しいシーンの直後に、読者の理解を置き去りにするようなギャグや狂気が飛び込んできます。
不器用な愛と、鋭利な感性が交差する奇跡の1冊
『人魚ラプソディ』で見せる海中の描写は、静謐でピアノの音色がこちらまで聞こえてきそうなほど美しい。しかし、その美しさの隣には常に「普通じゃない」違和感が潜んでいます。
『目が覚めたら女の子になっていた病』では、設定こそ古典的な変身ものですが、その内面の描き方はあまりに生々しく、おかしいのにどこか切ない絶妙なバランスを保っています。
特に『妹の姉』の出だし、記念写真のシーンには思わず吹き出しました。なぜこんな状況を思いつけるのかという素直な感動と、そこから「才能への嫉妬と愛」という深いテーマに着地させる構成力には脱帽するしかありません。
そして表紙を飾る『予言のナユタ』。のちの作品を知るファンにとっては、この個性的すぎる少女の造形に宿る「守りたくなるような暴力性」に、不思議な懐かしさと興奮を覚えるはずです。
洗練される前の荒削りな勢いと、すでに完成されている映画的な演出眼。後に大ヒット作を連発することになる鬼才の「萌芽」をこれでもかと見せつけられる、贅沢すぎる作品集でした。