ファイアパンチ 4 (ジャンプコミックスDIGITAL)
内容紹介
演じるのは「復讐者」か、それとも「神」か
ベヘムドルグから逃れた民を率いるアグニ。しかし、彼を待っていたのは安息ではなく、彼を「神」と崇める狂信的な集団でした。頼れる兄、復讐の主人公、そして今度は「宗教上の神」へ。周囲の身勝手な期待により、アグニはまたしても自分ではない何かを演じることを余儀なくされます。
一方、ユダの前には彼女と同じ顔を持つ「旧世代の生存者」が出現。明かされるのは、不平等が消え、進化の果てに文明を枯らせた超人類の成れの果てでした。 氷河期を終わらせ、好きな映画の新作を観たい――。そんなあまりにも個人的で「ぶっ飛んだ」理由のために、世界を再構築しようとする者たち。 彼らは一体どこへ向かおうとしているのでしょうか。
「神様」になってしまうアグニの悲劇
本人の意思とは無関係に、周囲の「救われたい」というエゴによって宗教のアイコンに仕立て上げられていくアグニ。この「宗教が出来上がっていく過程」の生々しさと、その重圧に押し潰されそうなアグニの対比が、現代的な恐怖を感じさせます。
トガタの正体と「映画」への執着
「スターウォーズの新作が観たいから世界を救う(あるいは壊す)」。一見ふざけているような動機が、この極限の世界では切実な「生きる意味」として響きます。心を読める祝福者によって暴かれるトガタの「性」と「嘘」。彼の仮面が崩壊する様は、今巻最大の戦慄ポイントかもしれません。
旧世代人が語る「不平等の価値」
すべてが平等になり、すべての祝福(能力)を使えるようになった人類が、なぜ滅びを選ぼうとしているのか。「能力や容姿が不平等だからこそ、人は生きる糧を持ち、文明が発展する」という逆説的な哲学は、エンタメの枠を超えた深い示唆を与えてくれます。
ルナに酷似した「氷の魔女」の再来
アグニの最愛の妹・ルナにそっくりの顔を持つ存在が再び現れ、アグニの精神をかき乱します。「世界を憎む元凶」が身内の顔をしているという、藤本先生らしい残酷な演出が光ります。
現実逃避としての「趣味」が、世界を形作る
トガタが語る「死後の映画館」の話が頭から離れません。私たちが現実の生死や欠陥から目をそらすために没頭する「映画」や「読書」といった逃避行。 それが、この物語では世界を滅ぼすほどのエネルギーに転じている。「逃避の何が悪い」と開き直りつつ、その逃避のために他者の命を平らげる傲慢さ。
ぶっ飛んだセリフの応酬にポカーンとさせられながらも、気づけば人間の根源的な業を突きつけられている……。この「予測不能なカオス」こそがファイアパンチの真骨頂だと再認識させられました。