七夕の国(1) (ビッグコミックス)
内容紹介
岩明均先生の隠れた超名作『七夕の国』第1巻。 本作は、『寄生獣』の爆発的なスリルとはまた異なる、じわじわと足元から侵食されるような「日常の崩壊」を描いたサイコ・サスペンスです。
「地味すぎる超能力」から始まる巨大な謎
主人公・南丸(ナンマル)が持つ能力は「あらゆるものに小さな穴を開ける」という、一見すると使い道のない地味なもの。しかし、この些細な違和感が、ある村に伝わる異様な風習や、戦国時代から続く血脈の謎へと繋がっていく構成が見事です。
岩明均流の「淡々とした恐怖」
『寄生獣』でも見られた、残酷な事象をあえて淡々と、客観的に描く筆致が本作でも冴え渡っています。日常の中にポッカリと空いた「穴」のような違和感が、次第に制御不能な狂気へと変貌していく過程は、ゾッとするような説得力があります。
「窓の外」というキーワードの不気味さ
物語の鍵を握る「窓の外を見張る」という独特の伝承。この言葉が持つ真の意味が少しずつ明かされていくミステリー要素が、読者の好奇心を強烈に牽引します。民俗学的なアプローチとSF的な想像力が完璧に融合した、岩明先生ならではの世界観です。
どこか憎めない「凡人」主人公の魅力
主人公のナンマルは、特別に正義感が強いわけでもない、どこにでもいる大学生です。そんな彼が、自らのルーツに隠された「特権」と「呪い」に向き合わざるを得なくなる展開は、読者が物語に没入するための絶好の入り口となっています。
派手なバトルなどではなく、静かに、しかし確実に世界が変質していく恐怖。岩明先生が描く「人ならざる者の理屈」が、現代社会の隙間にスルリと入り込んでくる感覚は、一度味わうと癖になります。